フェンダーメキシコの評価について調べているあなたは、その品質やUSA製との違い、そして価格に見合った価値があるのか、気になっているのではないでしょうか。
手頃な価格帯が魅力である一方、「安かろう悪かろう」ではないか、購入して失敗や後悔をしないか、といった不安を感じるかもしれません。
この記事では、そうした疑問を解消するために、フェンダーメキシコの本当の評価を徹底的に解説します。設立の背景からUSA製や日本製との具体的な違い、現行の人気ラインナップの特徴、そして中古市場での価値や購入時の注意点まで、網羅的に掘り下げていきます。
最後まで読めば、フェンダーメキシコがあなたにとって最適な一本となり得るか、明確な判断基準を持つことができるでしょう。
なぜ高い?フェンダーメキシコの評価を徹底分析

※画像はイメージです
フェンダーメキシコが高い評価を得ているのには、単に価格が手頃だからというだけではない、明確な理由が存在します。ここでは、その品質を支える歴史的背景から、USA製・日本製との比較、そして過去の品質に関する噂まで、多角的にその評価を分析していきます。
- 高品質を支える設立の背景
- USA製と比較した品質の実態
- フェンダージャパンとの明確な違い
- 噂は本当?90年代の品質について
- テレキャスターなど人気モデルの特徴
高品質を支える設立の背景
フェンダーメキシコのギターが高い品質を維持している背景には、その設立経緯が大きく関係しています。メキシコのエンセナダ工場は、単なるコスト削減のための生産拠点ではありません。
1980年代、経営の立て直しを迫られたフェンダー社は、CBS時代に低下した品質からの脱却を目指していました。
その中で、高級ラインを生産するアメリカのコロナ工場と、より多くのプレイヤーに製品を届けるための低コストな生産拠点の両立が課題となります。そこで白羽の矢が立ったのが、コロナ工場から車で数時間という近距離にあり、比較的治安の良いメキシコのエンセナダでした。
当初はギター弦の工場としてスタートしましたが、1988年、日本の高い技術力で知られるフジゲンの技術者たちを招き、本格的なギター生産の体制を整えます。この技術指導が、エンセナダ工場の品質の礎を築きました。
現在では、コロナ工場を超えるほどの最新設備が導入され、理想的な生産体制が実現していると評されています。また、コロナ工場との近接性を活かし、フェンダー・カスタムショップのマスタービルダーが定期的に訪れて直接技術指導を行う伝統も続いています。
豊かな生活とステイタスが得られる「フェンダー工場勤務」は、現地スタッフにとって大きなプライドとなっており、その勤勉さが製品の品質に直結しているのです。
これらの理由から、エンセナダ工場は単なる下位モデルの製造拠点ではなく、フェンダーブランドの品質を支える重要な柱として機能していると言えます。
USA製と比較した品質の実態
「フェンダーメキシコはUSA製と比べて品質が劣るのでは?」という疑問は、多くの人が抱くものです。しかし、この二つを「品質」という一つの物差しで単純に上下関係にあると考えるのは、必ずしも正しくありません。
現在のフェンダーでは、コロナ工場(USA)とエンセナダ工場(メキシコ)で、生産するモデルの「グレード」を分けています。
USA製は主にAmerican Professional IIシリーズやAmerican Vintage IIシリーズといったプロ仕様のハイエンドモデルを、メキシコ製はPlayer IIシリーズやVintera IIシリーズといった、より幅広い層に向けたモデルを生産しています。
では、製品の根本的な品質に差はあるのでしょうか。実は、両工場では多くの点で共通の基盤を持っています。
- 木材: 使用される木材は基本的に同じものが供給されています。
- 工作機械・製法: CNCルーターなどの主要な工作機械や基本的な製造方法は共通しており、どちらもマスタービルダーの管理下にあります。
このため、「メキシコ製だから作りが雑」ということは起こりにくい体制が整っています。価格差が生まれる主な要因は、使用されるパーツのグレード、塗装工程の手間、そして人件費の違いです。
具体的に、現行の代表的なモデルで比較してみましょう。
項目 | Fender Player II Stratocaster (メキシコ製) | Fender American Professional II Stratocaster (USA製) |
ボディ材 | アルダー | アルダー |
ネック | モダン”C”シェイプ、サテン仕上げ | ディープ”C”シェイプ、”Super-Natural”サテン仕上げ |
指板R | 9.5インチ | 9.5インチ |
フレット | 22、ミディアムジャンボ | 22、ナロートール |
ピックアップ | Player Plus Noiseless Strat | V-Mod II Single-Coil Strat |
ブリッジ | 2点支持シンクロナイズドトレモロ | 2点支持シンクロナイズドトレモロ(コールドロールドスチールブロック採用) |
塗装 | ポリエステル | ポリウレタン |
ケース | 付属なし、またはギグバッグ | デラックスモールドハードケース |
参考価格帯 | 10万円~13万円 | 25万円~30万円 |
このように、基本的な構造は似ていますが、ピックアップのグレードやネックの丁寧な仕上げ、ブリッジのブロック材、塗装の種類、そして付属ケースといった細かな仕様で差がつけられています。
USA製はより演奏性やサウンドの深みを追求した仕様になっている一方、メキシコ製は高品質を維持しながらコストを抑える工夫がされているのです。
したがって、両者の関係は品質の優劣ではなく、異なる価格帯とターゲット層に向けた「グレードの違い」と理解するのが最も的確だと言えます。
フェンダージャパンとの明確な違い
フェンダーメキシコは、かつて存在した「フェンダージャパン」ともしばしば比較されます。両者はそれぞれ異なる魅力と製造思想を持っており、どちらが良いかはプレイヤーの好みや求めるものによって変わります。
フェンダージャパン(およびその後継である日本製ライン)の最大の特徴は、日本の製造業ならではの精密で丁寧な作り込みにあります。細部の仕上げが美しく、個体差が少ない安定した品質は世界的に高い評価を得ていました。
サウンド面では、その精度の高さから、時として「音が硬い」「まとまりすぎている」と評されることがありましたが、クリアでシャープなトーンは多くのファンを魅了しました。ヴィンテージモデルの忠実な再現にも定評がありました。
一方、フェンダーメキシコは、USAの設計思想を色濃く受け継いでいます。良くも悪くも大らかさがあり、サウンドには暖かみや「いなたい」雰囲気を感じさせると言われます。
日本製がきっちりと均一に作られるのに対し、メキシコ製はセットアップを追い込むことでサウンドが「化ける」楽しみがあるとも評されます。これは、製品のポテンシャルがUSA製と共通していることの証左でもあります。
製造思想とサウンドの傾向
- フェンダージャパン: 精密な加工技術による安定した品質。クリアでタイトなサウンド傾向。ヴィンテージの仕様再現に強み。
- フェンダーメキシコ: USAの設計思想を継承。暖かみがあり、ロックやブルースに適したサウンド傾向。豊富なバリエーションとコストパフォーマンスが魅力。
2015年にフェンダージャパンという枠組みがなくなり、現在はフェンダー社の直轄管理のもとで日本製モデルが展開されています。
メキシコ製も日本製も、同じフェンダーブランドのギターであることに変わりはありません。しかし、その背景にある製造文化の違いが、それぞれ独自の個性として製品に表れているのです。
噂は本当?90年代の品質について
フェンダーメキシコの評価を語る上で、時折話題に上るのが「90年代の製品は品質が低かった」という噂です。これは、全くのデマというわけではなく、ある程度の背景が存在します。
エンセナダ工場が本格的にギター生産を開始したのが1989年です。90年代初頭は、工場の立ち上げから日が浅く、生産ラインが安定するまでの過渡期でした。
この時期の一部の製品には、塗装の薄さや仕上げの粗さといった品質のばらつきが見られたことがあったのは事実のようです。USA製の代替品という位置づけで登場したため、厳しい目で見られがちだった側面もあります。
しかし、これはあくまで初期の限られた期間の話です。前述の通り、フジゲンからの技術指導やマスタービルダーによる継続的な品質管理によって、工場の生産技術は飛躍的に向上しました。特に2000年代以降は、最新設備の導入も進み、品質は非常に安定しています。
現在の中古市場で90年代のメキシコ製ギターを見つけた場合、過度に品質を心配する必要はありません。むしろ、その時代ならではのサウンドを持つ個体として、一部の愛好家からは好んで選ばれることもあります。
もちろん、中古品である以上、ネックの状態やパーツの消耗度などをしっかり確認することは大切ですが、「90年代製だから」という理由だけで選択肢から外すのは早計と言えるでしょう。
テレキャスターなど人気モデルの特徴
フェンダーメキシコは、ストラトキャスターだけでなく、もう一つの看板モデルであるテレキャスターにおいても非常に高い評価を得ています。
メキシコ製のテレキャスターは、USAモデルの持つ本質的な魅力を受け継ぎながら、現代のプレイヤーに合わせた仕様と優れたコストパフォーマンスを実現しています。
メキシコ製テレキャスターのサウンドは、伝統的な「トゥワンギー」と称される、太く歯切れの良いトーンが特徴です。
カントリーやブルース、ロックンロールといったジャンルに最適なサウンドを基本としながらも、シリーズによってはよりパワフルなハムバッカーを搭載したり、モダンな演奏性を高めるための改良が加えられたりしています。
例えば、現行の「Player II Telecaster」は、伝統的なルックスを保ちつつ、プッシュ/プル式のトーンポットで二つのピックアップをシリーズ(直列)接続に切り替え可能で、ハムバッカーのような太いサウンドも得られます。これにより、一台でこなせる音楽ジャンルの幅が大きく広がりました。
また、ヴィンテージスタイルを追求した「Vintera II」シリーズでは、50年代の肉厚なネックや60年代のローズウッド指板といった、年代ごとの特徴を的確に再現したモデルがラインナップされています。
このように、フェンダーメキシコはストラトキャスターやテレキャスターといった定番モデルにおいて、ただ安価なだけでなく、プレイヤーの多様なニーズに応えるための幅広い選択肢を提供しています。これが、初心者から経験豊富なギタリストまで、多くの層に支持される大きな理由です。
後悔しないためのフェンダーメキシコの評価基準

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フェンダーメキシコのギターが、優れた品質とコストパフォーマンスを両立していることはご理解いただけたかと思います。
では、実際に数あるモデルの中から自分に合った一本を選び、後悔しないためには、どのような基準で評価すればよいのでしょうか。ここでは、具体的な選び方から、購入時に役立つ知識までを解説します。
- 豊富なラインナップから選ぶコツ
- シリアルナンバーの見方と重要性
- 中古市場における価値と需要
- 購入時に注意すべきポイント
- まとめ:あなたのフェンダーメキシコ評価
豊富なラインナップから選ぶコツ
フェンダーメキシコの魅力は、その豊富なラインナップにあります。伝統的なスタイルから現代的なアレンジを加えたモデルまで多岐にわたるため、自分のプレイスタイルや好みに合わせて選ぶことが鍵となります。
初心者から中級者まで:Player II シリーズ
2024年にリニューアルされた「Player II」シリーズは、現代の標準と言えるモデルです。伝統的なフェンダーサウンドを基盤としつつ、22フレット仕様や2点支持トレモロなど、現代的な演奏性を高める工夫が随所に施されています。
カラーバリエーションも豊富で、まさに「最初のフェンダー」として、また長く使える一本として最適なシリーズです。
モダンな機能を求めるなら:Player Plus シリーズ
Playerシリーズをさらに進化させたのが「Player Plus」シリーズです。最大の特徴は、ノイズを軽減した「Noiselessピックアップ」の搭載と、トーンポットの操作でピックアップの組み合わせを切り替えられる特殊な配線です。
より多彩なサウンドを求めるプレイヤーや、歪ませたサウンドを多用する現代的なロックを演奏する人に向いています。ネックのエッジが滑らかに処理されているなど、弾き心地も向上しています。
ヴィンテージの雰囲気を楽しむ:Vintera II シリーズ
50年代、60年代、70年代といった特定の年代の仕様を再現したのが「Vintera II」シリーズです。
当時のネックシェイプ(太い”V”シェイプやスリムな”C”シェイプなど)やピックアップのサウンド、指板のR(カーブ)などが忠実に再現されており、ヴィンテージギターの雰囲気を手頃な価格で味わいたいプレイヤーにぴったりです。
特定のアーティストに憧れるなら:Artist シリーズ
ジミ・ヘンドリックス、リッチー・ブラックモア、バディ・ガイといった伝説的なギタリストのシグネイチャーモデルも、メキシコ工場で生産されています。憧れのアーティストが使用したギターの仕様を基に作られており、ファンにとってはたまらない一本となるでしょう。
これらのシリーズごとの特徴を理解し、「どんな音楽を弾きたいか」「どんなサウンドやルックスが好みか」を明確にすることが、後悔しないギター選びの第一歩となります。
シリアルナンバーの見方と重要性
フェンダーメキシコのギターを手にした際、その個体の素性を知る上で非常に重要なのがシリアルナンバーです。特に中古品を購入する際には、製造年やオリジナル性を確認するために必ずチェックすべきポイントです。
シリアルナンバーは、主にヘッドストックの裏側や、モデルによってはネックとボディの接合部のプレートに記載されています。基本的にはアルファベットと数字の組み合わせで構成されています。
主なシリアルナンバーの読み方
- MN + 数字: MはMexico、NはNineties(90年代)を意味します。例えば「MN8」で始まる場合、1998年製であることを示します。
- MZ + 数字: ZはZ-seriesを意味し、2000年代を示します。「MZ1」なら2001年製です。
- MX + 数字: 2010年以降のモデルで、現在最も一般的に見られる形式です。「MX17」であれば2017年製、「MX24」であれば2024年製となります。
このシリアルナンバーを確認することで、そのギターがいつ頃作られたものなのかを正確に把握できます。これにより、前述した90年代初期のモデルかどうかを判断したり、中古楽器店の説明と実際の製造年が一致しているかを確認したりすることが可能です。
また、万が一偽物やコピー品であった場合、シリアルナンバーの書式が異なっていたり、存在しない番号であったりすることがあります。購入するギターの信頼性を担保するという意味でも、シリアルナンバーの見方を知っておくことは非常に大切です。
中古市場における価値と需要
フェンダーメキシコ製品は、新品市場だけでなく中古市場でも非常に高い需要を誇ります。その理由は、新品時の優れたコストパフォーマンスに加え、長年の使用にも耐えうる安定した品質が中古市場でも信頼されているためです。
中古品の価格帯は、モデルや状態によって様々ですが、一般的には5万円台から10万円前後で取引されることが多いようです。
Playerシリーズのような定番モデルは常に人気があり、状態の良いものであればすぐに買い手がつきます。限定生産されたモデルや、現在は生産完了となっている人気カラーの個体などは、中古であっても価格が下がりにくく、時には新品時と変わらない価格で取引されることもあります。
中古でフェンダーメキシコを選ぶメリットは、何と言っても価格の手頃さです。新品で購入するよりも数万円安く手に入れられることが多く、その差額をアンプやエフェクターなどの機材に充てることもできます。
ただし、中古品を購入する際には注意も必要です。ネックの反りやねじれ、フレットの減り具合、電気系統のガリ(ノイズ)や接触不良、塗装の剥がれや打痕など、チェックすべき項目は多岐にわたります。
信頼できる楽器店で購入するか、詳しい友人に見てもらうなどして、ギターの状態をしっかりと確認することが、満足のいく買い物につながる鍵となります。
購入時に注意すべきポイント
フェンダーメキシコのギターを購入する際に、後悔しないために注意すべきいくつかのポイントがあります。これらは新品・中古を問わず共通する重要なチェック項目です。
必ず試奏する
可能であれば、必ず楽器店で実際にギターを構え、音を出してみてください。スペック上の数値だけでは分からない、ネックの握り心地やボディのバランス、そして生鳴りの響きなどを体感することが最も大切です。
同じモデルであっても、木材である以上、僅かな個体差は存在します。自分が「弾きやすい」「良い音だ」と感じる一本を見つけることが重要です。
ネックの状態を確認する
ギターの演奏性に最も影響するのがネックの状態です。まっすぐであるか(順反りや逆反りをしていないか)、弦のビビリや音詰まりがないかをチェックしましょう。特に中古品の場合は、ネックがねじれていないかどうかも慎重に確認する必要があります。
セットアップの可能性を考慮する
フェンダーのギターは、工場出荷時の状態からさらに自分の好みに合わせてセットアップ(調整)することで、飛躍的に弾きやすくなることがよくあります。弦高やネックの反り、ピックアップの高さなどを調整することで、見違えるようなサウンドと演奏性を手に入れられる可能性を秘めています。
もし購入したギターが少し弾きにくいと感じても、リペアショップなどで調整を依頼することを前提に考えるのも一つの手です。
付属品を確認する
新品の場合、モデルによってはギグバッグが付属します。中古品の場合は、アームやケースなどの付属品が揃っているかを確認しましょう。特にトレモロアームは後から買い足すと意外と費用がかかることもあるため、チェックしておくと安心です。
これらのポイントを念頭に置き、じっくりと自分の一本を選ぶことで、フェンダーメキシコのギターはあなたの音楽ライフにとって最高の相棒となってくれるでしょう。
まとめ:あなたのフェンダーメキシコ評価
この記事では、フェンダーメキシコの評価について、その背景から具体的なモデル、選び方までを多角的に解説してきました。最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- メキシコ工場はコスト削減だけでなく高品質な製品を供給する重要拠点
- 設立には日本のフジゲンの技術指導が大きく貢献している
- USA製との差は品質の優劣ではなくパーツや工程によるグレードの違い
- 両工場では木材や基本的な製法が共有されている
- 日本製は精密さ、メキシコ製はUSA由来の暖かみが特徴
- 90年代の品質の噂は初期の過渡期のもので現在は非常に安定
- Player IIシリーズは現代のスタンダードモデルで初心者にも最適
- Player PlusシリーズはノイズレスPUなどモダンな機能を搭載
- Vintera IIシリーズは年代ごとの仕様を再現したヴィンテージ好き向け
- Artistシリーズで憧れのギタリストの仕様を追体験できる
- シリアルナンバーで製造年が分かり中古購入時の判断材料になる
- 中古市場でも人気が高くコストパフォーマンスに優れる
- 購入時は必ず試奏しネックの状態や弾き心地を確認することが大切
- 購入後のセットアップでさらに弾きやすく「化ける」可能性がある
- フェンダーメキシコは幅広いプレイヤーのニーズに応える豊富な選択肢を持つ