皆さんは楽器店やネットショップで「Cort」というロゴの入ったギターを見かけたことはありませんか。
有名なブランドに比べて価格が安いけれど、実際のところCortギターの評判はどうなのか、どこの国のメーカーで作られているのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
中には、あまりに安いため品質に不安を感じて購入を迷っている方もいるかもしれません。実はこのブランド、私たちがよく知る多くの有名メーカーと深い関わりがあるんです。
Cortギターの評判とブランドの真実

まずはCortというブランドが一体何者なのか、その正体に迫っていきましょう。ネット上で検索すると様々な意見が飛び交っていますが、その背景にある歴史や生産体制を知ることで、評価の意味がガラリと変わって見えてくるはずです。
Cortギターはどこの国のメーカーか
Cort(コルト)は、韓国に拠点を置く「Cor-Tek Corporation」という会社が展開するオリジナルブランドです。その歴史は意外に古く、1960年代にJack Westheimer氏とYung H. Park氏が手を組み、日本と韓国、そしてアメリカを結ぶ楽器貿易ビジネスを始めたことが起源となっています。
もともとは「Yoo-Ah」という会社からスタートし、その後現在のCortブランドが確立されました。創業当初から「製造と流通の最適化」を掲げていた彼らは、自社工場を海外に持ち、そこから世界中に製品を送り出すという、当時としては画期的なビジネスモデルを構築しました。
現在は、韓国だけでなくインドネシアや中国にも大規模な自社工場を展開しており、私たちが手にする現行モデルの多くは、最新設備が整ったインドネシア工場などで生産されています。
つまり、単なる「安いアジア製」という枠には収まらない、グローバルな生産ネットワークを持つ巨大メーカーなのです。
Cortギターを使用するアーティスト
「安いギター=初心者向け」というイメージがあるかもしれませんが、実は世界的なプロミュージシャンたちもCortを認めています。
過去にはジャズ・フュージョン界の巨匠Larry Coryellや、ブルース・ブラザーズ・バンドのMatt “Guitar” Murphyといったレジェンドたちが名を連ねていました。
また、インストゥルメンタル・ロックの名手Neil Zazaや、著名なルシアーであるClaudio Pagelliとのコラボレーションモデルも存在します。
これは、Cortが単に図面通りの製品を作る工場というだけでなく、プロの現場で通用する楽器としての完成度を追求し、アーティストからのフィードバックを製品開発に活かしている証拠だと言えるでしょう。
世界シェアを支えるOEMの実績
ここがCortを語る上で最も重要なポイントです。実は、世界中で販売されているギターのかなりの割合が、Cortの工場で作られているという話をご存知でしょうか。
Cortは自社ブランドだけでなく、他社ブランドの製品を受託製造する「OEM」ビジネスにおいて、世界最大級のシェアを持っています。あくまで噂や一部公開情報レベルですが、以下のような有名ブランドの製造に関わっていると言われています。
Cort工場が製造に関わっているとされる主なブランド例
- Ibanez(アイバニーズ)の多くのモデル
- Squier(スクワイヤー)の一部モデル
- PRS SEシリーズ(Paul Reed Smithのエントリーライン)
- G&L Tributeシリーズ
これらの一流ブランドは、非常に厳しい品質管理基準(QC)を設けています。Cortの工場はそれらをクリアする技術力と設備を持っているわけです。つまり、Cortの自社ギターには、世界トップレベルのブランドを支えるノウハウがそのまま投入されているのです。
なぜCortギターは安いのかその理由
「品質が良いなら、なぜあんなに安いの?」という疑問が湧いてきますよね。その答えは、製造から販売までの「構造」にあります。
通常、有名ブランドのギターを購入する場合、そこには「ブランド料」や、工場からブランドへ、そして代理店へと渡る際の「中間マージン」が含まれます。しかし、Cortの場合は「工場が自分のブランドを売っている」状態に近いため、これらの中間コストを大幅にカットできるのです。
あるユーザーが「Cortは有名ブランドの95%の品質を半額で提供している」と評していましたが、これは的を射た表現だと思います。失われている数パーセントは、ヘッドのロゴに対するステータス代だけかもしれません。
初心者が注意すべきセットアップ
ここまで良いことづくめのようですが、購入時に注意すべき点も正直にお伝えしておきます。Cortのギターは、楽器店だけでなく、コストコのような量販店や通販サイトでも広く販売されています。
通販や量販店での購入リスク
専門店以外で購入した場合、ギターの「調整(セットアップ)」が不十分な状態で届くことがあります。特に「弦高が高い」「ネックが反っている」といった状態だと、初心者の方は弾きにくくて挫折してしまう原因になります。
もし通販で安く手に入れた場合は、近くの楽器店やリペアショップに持ち込んで、数千円かけてでもプロによる初期調整をしてもらうことを強くおすすめします。このひと手間を加えるだけで、Cortギターは「隠れた名機」へと化けます。調整費込みで予算を組むのが、賢い買い物術ですね。
モデル別に検証するCortギターの評判

ここからは、エレキギター、アコースティックギター、ベースの各カテゴリーにおいて、具体的にどのモデルが注目されているのか、そのスペックと評判を深掘りしていきましょう。
エレキギターGシリーズの評価
Cortのエレキギターの中で、特に評価が高いのが「Gシリーズ」です。見た目は伝統的なストラトキャスタータイプですが、中身は現代的なテクニカルプレイに対応した「モダン・コンポーネント」仕様になっています。
特にフラッグシップモデルの「G300 Pro」は、10万円台前半という価格ながら、他社の20〜30万円クラスのギターに匹敵するスペックを持っています。
| 特徴 | メリット |
|---|---|
| ローステッドメイプルネック | 熱処理により安定性が向上し、ヴィンテージのような枯れた鳴りを実現。 |
| ステンレスフレット | 錆びにくく摩耗しないため、メンテナンスフリーで滑らかな運指が可能。 |
| Seymour Duncanピックアップ | プロ御用達の定番ピックアップを標準搭載。交換の必要なし。 |
また、エントリークラスの「G250 SE」でもローステッドメイプルを採用するなど、コストパフォーマンスへの執念すら感じさせます。
アコギEarthシリーズの音質
アコースティックギターでは「Earthシリーズ」が主力です。このシリーズの凄いところは、低価格帯でありながら「トップ単板(Solid Top)」を惜しみなく採用している点です。
安いギターは通常、木を貼り合わせた「合板」を使いますが、Earthシリーズ(Earth 70や100など)は、ボディの表面に一枚板のシトカスプルースを使っています。これにより、弦の振動が豊かに響き、弾き込むほどに音が成長していきます。
塗装にも秘密が!「オープンポア・フィニッシュ」
木の導管を埋めずに極薄の塗装で仕上げるこの製法は、木の鳴りを阻害せず、自然でウッディな響きを生み出します。指紋が目立ちにくいのも嬉しいポイントです。
ベースArtisanシリーズの魅力
実は、ギタリスト以上にベーシストからの評価が高いのがCortです。「Artisan(アルチザン)シリーズ」は、ハイエンドベースへの入り口として絶大な人気を誇ります。
その理由は、心臓部であるパーツ選びに一切の妥協がないからです。ピックアップにはBartolini(バルトリーニ)、プリアンプにはMarkbass(マークベース)、そしてペグやブリッジにはHipshot(ヒップショット)といった、一流ブランドのパーツが標準装備されています。
これらを自分で後から改造して載せようとすると、パーツ代だけで数万円は飛んでしまいます。それが最初から付いているのですから、お買い得としか言いようがありません。
ライバル機種とのスペック比較
日本市場でCortを検討する際、必ず比較対象になるのが「Yamaha Pacifica(パシフィカ)」や「Bacchus(バッカス)」でしょう。
Yamaha Pacifica 612VIIFMとの比較
安心感とリセールバリュー(売る時の値段)なら、圧倒的にYamahaです。どこでも買えて、誰が弾いても良い音がします。しかし、「ステンレスフレット」や「よりテクニカルなネック形状」といったモダンな仕様を求めるなら、CortのG300 Proに軍配が上がります。
Bacchus Global Seriesとの比較
Bacchusもローステッドメイプルを採用しており、良いライバルです。トラディショナルな見た目や日本的な丁寧な作りを好むならBacchus、より現代的で攻撃的なスペックを好むならCort、という選び分けになるかなと思います。
Cortギターの評判と購入の結論
最後にまとめとして、Cortギターは「買い」なのかどうか、私の結論をお伝えします。
ブランドのロゴによるステータスや、将来高く売ることを考えないのであれば、Cortは「間違いなく買い」です。特に、「限られた予算で、プロが使うのと同等の機能やスペックを手に入れたい」という合理的な考えを持つ方には、これ以上ない選択肢となるでしょう。
世界最大級のギター工場の実力は伊達ではありません。最初の調整さえしっかり行えば、あなたの良き相棒として長く活躍してくれるはずです。ぜひ、そのコストパフォーマンスの高さを実際に体感してみてください。
※本記事の情報は執筆時点のものです。製品の仕様や価格は変更される場合がありますので、正確な情報は公式サイト等をご確認ください。最終的な購入判断はご自身の責任で行ってください。

