これからギターを始めたい、あるいは手頃なセカンドギターを探しているけれど、スクワイヤーの評判が気になっている、という方は多いのではないでしょうか。
世界的なブランドであるフェンダーとの関係から、なぜ安いのか、そして「恥ずかしい」や「ダサい」といったネガティブな噂の真相まで、気になる点は尽きません。
また、スクワイヤーで十分という肯定的な意見もあり、実際の評価は一体どうなのか判断に迷うこともあるでしょう。特に、クラシックヴァイブやジャズマスターといった人気モデルや、数あるシリーズごとの違いを正確に把握するのは難しいものです。
この記事では、そうしたスクワイヤーに関するあらゆる疑問に、専門的な視点から分かりやすくお答えします。各シリーズの特徴から具体的なモデルの評価、さらには改造の可能性まで、あなたが最適な一本を見つけるための情報を網羅しています。
スクワイヤーの全体的な評判と基本情報
- スクワイヤーとフェンダーとの関係
- スクワイヤーのギターはなぜ安いのか
- 恥ずかしい、ダサいという評判は本当か
- 主要なシリーズの違いを分かりやすく解説
- 作りや加工精度のリアルな評価点
スクワイヤーとフェンダーとの関係
スクワイヤー(Squier)は、世界で最も有名なギターメーカーの一つであるフェンダー社が展開する、直系のブランドです。正式には「Squier by Fender」と表記され、フェンダーがデザインや設計に責任を持つことを示しています。
そのため、本家フェンダーが製造するストラトキャスターやテレキャスターといったモデルの形状や名称を、公式に受け継いで販売することが可能です。
このブランドが生まれた背景には、フェンダーが高品質なギターを製造する一方で、より多くの人々、特にギターを始めたばかりの初心者が手に取りやすい価格帯の製品を提供したいという想いがありました。
言ってしまえば、スクワイヤーはフェンダーの入門編、あるいは廉価版という位置づけになります。しかし、単なるコピーモデルとは一線を画し、ヘッドにはフェンダーのロゴと共にスクワイヤーの名が刻まれているのが特徴です。
これにより、ユーザーは「安いけれど本物」という満足感を得ることができ、フェンダーブランドの世界観への入り口としての役割を担っています。
スクワイヤーのギターはなぜ安いのか
スクワイヤーのギターが手頃な価格で提供される理由は、主に製造コストを戦略的に抑える工夫にあります。これは品質を完全に犠牲にするという意味ではなく、価格と品質のバランスを考慮した結果です。
主な理由として、以下の三点が挙げられます。
生産拠点
人件費が比較的安価なインドネシアや中国などの国で製造することにより、生産コストを大幅に削減しています。
使用される木材やパーツの選定
ボディ材には、フェンダー本家でよく使われるアルダーやアッシュではなく、より安価で安定供給が可能なポプラやナトーなどが採用されることが多くあります。これらの木材もギターに適した音響特性を持っていますが、コスト面でのメリットが大きいのが特徴です。
また、ピックアップやペグ、ブリッジ、内部の配線材といったハードウェア類も、高価なモデルに搭載されるものとは異なる、コストを抑えたパーツが使われています。
製造工程の効率化
例えば、「弁当箱ザグリ」と呼ばれるボディの加工方法が挙げられます。これは、様々なピックアップの組み合わせに対応できるよう、ピックアップキャビティ(穴)を大きく一つにまとめて掘る手法です。これにより、モデルごとの細かな加工工程を省略でき、生産効率を高めてコストダウンに繋げています。
これらの理由から、スクワイヤーはフェンダーブランドの品質基準を保ちつつ、驚くほどのコストパフォーマンスを実現しているのです。
恥ずかしい、ダサいという評判は本当か
「スクワイヤーは恥ずかしい、ダサい」という評判を耳にすることがありますが、これは主に「安いギター=初心者向け」という固定観念から来ていると考えられます。
確かに、スクワイヤーはエントリーモデルとしての位置づけが強く、プロがメインで使用する高価なギターと比較されると、見劣りする部分があるのは事実です。
しかし、この評価は必ずしも適切ではありません。なぜなら、ギターの価値は値段だけで決まるものではないからです。
実際、多くのプロミュージシャンがスクワイヤーのギターを愛用しています。例えば、ジャミロクワイのロブ・ハリスや、ダイナソーJr.のJ・マスシスは自身のシグネチャーモデルをスクワイヤーからリリースしています。
また、日本でもOKAMOTO’SのオカモトコウキやSCANDALのメンバーなど、多くのアーティストがレコーディングやライブで使用しており、その実用性の高さを証明しています。
Squier®︎ Special Interview | オカモトコウキ(OKAMOTOʼS) – FenderNews
【エレキギター】Squier by FenderのSCANDALモデルがいよいよ受注開始! | ギタセレ(Guitar Selection)
むしろ、テクニックが未熟なうちに背伸びをして高価なギターを持つことこそ「恥ずかしい」と感じる人もいます。大切なのは、自分自身の目的やレベルに合った楽器を選び、楽しんで演奏することです。
スクワイヤーは、その価格帯から気兼ねなく扱え、改造のベースとしても楽しめる魅力的な選択肢であり、決して「ダサい」と一括りにされるべきブランドではないと言えるでしょう。
主要なシリーズの違いを分かりやすく解説
スクワイヤーには、価格帯やコンセプトによって複数のシリーズが存在し、それぞれに特徴があります。どのシリーズを選ぶかによって、サウンドや弾き心地、満足度が大きく変わるため、違いを理解しておくことが大切です。
現在、主に展開されているのは以下の4つのシリーズです。
- Sonic(ソニック)シリーズ: 最も手頃な価格帯で、これからギターを始める方に最適なシリーズ。旧Bulletシリーズの後継にあたります。
- Affinity(アフィニティ)シリーズ: Sonicシリーズよりワンランク上で、カラーバリエーションも豊富な人気の定番シリーズ。
- Classic Vibe(クラシックヴァイブ)シリーズ: 50年代や60年代など、特定の年代のヴィンテージスペックを追求した上位シリーズ。
- Contemporary(コンテンポラリー)シリーズ: モダンなプレイスタイルに対応するため、パワフルなピックアップや演奏性の高い仕様を取り入れたシリーズ。
これらの特徴を以下の表にまとめました。
シリーズ名 | ターゲット層 | 主なボディ材 | ピックアップの特徴 | 価格帯(目安) | 主な特徴 |
Sonic | 完全な初心者 | ポプラ | セラミック | 2万円台 | 最も手頃で基本的なスペック。軽量な薄型ボディ。 |
Affinity | 初心者~中級者 | ポプラ | セラミック | 3万円台~ | 定番モデル。2点支持トレモロなど操作性が向上。 |
Classic Vibe | 中級者~ | ナトー、ポプラ等 | Fender設計アルニコ | 5万円台~ | ヴィンテージライクなルックスとサウンド。グロスネック。 |
Contemporary | モダン志向のプレイヤー | ポプラ | Squier SQR™ハムバッカー等 | 5万円台~ | ローステッドネックやパワフルなPUなど現代的な仕様。 |
このように、単に安いだけでなく、求めるサウンドや演奏性に応じて幅広い選択肢が用意されているのがスクワイヤーの魅力です。
作りや加工精度のリアルな評価点
スクワイヤーのギターの作りや加工精度については、価格を考慮すると十分に良好ですが、やはり高価なモデルと比較すると甘さが見られるというのが正直な評価です。限られた予算内で製造されているため、細部にわたって完璧な仕上げを期待するのは難しいかもしれません。
具体的に指摘されがちな点としては、以下のようなものが挙げられます。
ネック周りの仕上げ
個体によっては、フレットの端が少しざらついていたり、ナットの溝の切り方が最適でなかったりする場合があります。フレットのざらつきはチョーキング時の滑らかさに影響し、ナットの調整が不十分だと弦高やチューニングの安定性に影響を与える可能性があります。
ボディの加工と組み込み
前述の通り、コストダウンのための「弁当箱ザグリ」が採用されているモデルでは、その内部の木工加工がやや粗いことがあります。また、ネックとボディを接合するネックポケットの精度が甘く、弦がピックアップのポールピースの真上からずれてしまう「センターずれ」が発生している個体も時折見受けられます。
パーツの品質
ペグ(糸巻き)やブリッジ、ジャックなどのハードウェアは、機能的には問題ありませんが、操作感や長期的な耐久性の面では安価なものが使われているため、やや安っぽさを感じるかもしれません。
ただ、これらの点は近年、全体の品質向上によって大きく改善されてきているのも事実です。特にClassic Vibeシリーズのような上位機種では、価格以上の丁寧な作りが評価されています。購入する際は、これらの点を念頭に置きつつ、可能であれば実際に楽器に触れて個体差を確認するのが理想的です。
モデル別に深掘りするスクワイヤーの評判
- 上位機種クラシックヴァイブの評価
- 人気のジャズマスターの評価と特徴
- Affinityシリーズの評価と実力
- 改造で評価は変わるのか?
- 結論としてスクワイヤーで十分なのか
- まとめ:本当のスクワイヤーの評判とは
上位機種クラシックヴァイブの評価
スクワイヤーの中でも上位シリーズに位置づけられるClassic Vibe(クラシックヴァイブ)は、「価格を超えたクオリティ」として非常に高い評価を得ています。このシリーズは、50年代、60年代、70年代といったフェンダーの黄金時代の仕様を、現代的な演奏性も考慮しつつ再現しているのが特徴です。
高く評価される理由の一つに、サウンドの要であるピックアップが挙げられます。安価なシリーズで採用されるセラミック製ではなく、フェンダーが設計したアルニコ・マグネットのピックアップを搭載しています。これにより、セラミックピックアップのパワフルなサウンドとは異なり、よりクリアで繊細な、ピッキングニュアンスを忠実に再現するヴィンテージライクなトーンが得られます。
また、外観や弾き心地に関わる部分にもこだわりが見られます。飴色がかった光沢のあるグロスフィニッシュのネックは高級感を演出し、サテンフィニッシュのネックとは異なる滑らかな手触りを提供します。フレットには、近年のトレンドでもあるナロートールタイプが採用されることが多く、軽い力で押弦でき、サステイン(音の伸び)にも貢献します。
もちろん、ボディ材にはナトーやポプラなどが使われており、本家フェンダーとは異なりますが、そのサウンドキャラクターもモデルのコンセプトに合わせてチューニングされています。これらの点から、Classic Vibeシリーズは、単なる廉価版ではなく、特定の年代の音楽スタイルを愛するプレイヤーにとって、非常にコストパフォーマンスの高い選択肢と考えられます。
人気のジャズマスターの評価と特徴
スクワイヤーのラインナップの中でも、独特のボディシェイプで人気を博しているのがジャズマスターです。特にAffinityシリーズなどで手頃な価格で提供されており、多くのギタリストにとってジャズマスターという個性的なモデルへの入り口となっています。
スクワイヤー製ジャズマスターの評価を考える上で、最も重要な特徴は、伝統的なジャズマスターとは一部仕様が異なる点です。特にブリッジの構造が大きく違います。本来のジャズマスターは、弦の張力でブリッジが前後に揺れる「フローティングトレモロ」を搭載しており、これが独特のサウンドと演奏感を生み出します。
しかし、スクワイヤーのAffinity Jazzmasterなどでは、ストラトキャスターに近い「シンクロナイズドトレモロ」や、固定式のブリッジが採用されています。
これは、構造がシンプルでチューニングが安定しやすく、初心者にも扱いやすいというメリットがあります。一方で、伝統的なジャズマスター特有の浮遊感のあるアームプレイやサウンドを求めるユーザーにとっては、物足りなさを感じるかもしれません。
ピックアップに関しても、モデルによってはジャズマスター専用の幅広なタイプではなく、P-90タイプやハムバッカーが搭載されることもあります。
要するに、スクワイヤーのジャズマスターは、「本格的なジャズマスターの完全な再現」というよりは、「ジャズマスターの魅力的なルックスと雰囲気を、より現代的で扱いやすい仕様で実現したギター」と捉えるのが適切です。この仕様を理解した上で選ぶのであれば、非常にコストパフォーマンスが高く、満足のいく一本になるでしょう。
Affinityシリーズの評価と実力
Affinity(アフィニティ)シリーズは、スクワイヤーのラインナップの中核をなす、最も人気の高い定番シリーズです。これからギターを始める初心者が最初の1本として選ぶ際の、最有力候補と言っても過言ではありません。
このシリーズの評価が高い理由は、手頃な価格でありながら、フェンダー直系ブランドとしての基本的な性能をしっかりと押さえている点にあります。ボディ材には軽量なポプラが使われることが多く、長時間の練習でも疲れにくいのが特徴です。ネックは多くのプレイヤーにとって握りやすいとされる「Cシェイプ」で、スムーズな演奏をサポートします。
サウンド面では、セラミックピックアップを搭載しており、クリアでパワフルなトーンを出力します。これは、ロックやポップスなど、幅広いジャンルに対応できる汎用性の高いサウンドです。また、近年のモデルでは、ストラトキャスターのトレモロユニットが2点支持タイプにアップグレードされるなど、操作性やチューニングの安定性も向上しています。
一方で、上位シリーズと比較すると、パーツの質感や細部の仕上げには価格なりの部分も見られます。しかし、ギターとしての基本的な機能は十分に満たしており、初心者が練習し、上達していく過程を支えるには十分な実力を持っています。価格と品質のバランスが非常に良く、まさに入門用ギターの王道と言えるシリーズです。
改造で評価は変わるのか?
スクワイヤーのギターは、そのままでも十分に楽しめますが、「改造ベース」としてのポテンシャルが非常に高いことでも知られています。パーツを交換することで、サウンドや演奏性、そして見た目の満足度を大きく向上させることができ、評価はがらりと変わる可能性があります。
なぜ改造ベースとして人気があるかと言うと、元々のギター本体(木工部分)の作りがある程度の水準にありながら、搭載されているパーツがコスト重視のものであるためです。つまり、パーツ交換による「伸びしろ」が大きいのです。
特に効果が高いとされる改造は、以下の通りです。
ペグの交換
チューニングの安定性に直結する最も重要なパーツです。GOTOH(ゴトー)製などの高精度なペグに交換することで、チューニングの狂いが少なくなり、ストレスなく演奏に集中できるようになります。これは実用性に直結するため、真っ先に検討したい改造点です。
電装系のアップグレード
ピックアップ、ポット、コンデンサー、ジャックなどを交換することで、サウンドの質を向上させることができます。特にピックアップは音の心臓部であり、好みのブランドのものに交換すれば、サウンドキャラクターを劇的に変えることが可能です。
また、信頼性の高いスイッチクラフト製のジャックに交換すれば、接触不良などのトラブルを未然に防げます。
これらの改造には追加の費用と手間がかかりますが、自分だけの一本を育てていく楽しみがあります。スクワイヤーのギターは、こうしたカスタマイズを通じて、高価なギターにも負けない愛着のある楽器へと変化させることができるのです。
結論としてスクワイヤーで十分なのか
では、様々な評価点を踏まえた上で、スクワイヤーのギターで十分と言えるのでしょうか。この問いに対する答えは「あなたの目的やギターに求めるもの次第で、十分に満足できる選択肢である」となります。
もし、あなたが最高の木材、最高のパーツ、完璧な仕上げが施された一生モノのメインギターを探しているのであれば、フェンダーの上位モデルや他のハイエンドブランドを検討する方が良いかもしれません。スクワイヤーには、コストの制約からくる作りの甘さやパーツの安っぽさが存在するからです。
しかし、一方で、以下のような目的を持つユーザーにとっては、スクワイヤーは最適解となり得ます。
まず、ギターを始めたばかりの初心者の方です。手頃な価格で、しっかりとしたブランドの「本物」のシェイプを持つギターを手に入れられることは、練習のモチベーション維持に繋がります。
次に、気軽に扱えるセカンドギターを探している経験者です。ライブで激しく使ったり、屋外に持ち出したりと、高価なメインギターでは気を使うような場面でも、スクワイヤーなら心置きなく演奏に集中できます。
そして、ギターの改造やカスタマイズを楽しみたい方です。前述の通り、スクワイヤーは改造ベースとして非常に優れており、自分好みのサウンドやルックスに仕上げていく過程そのものを楽しめます。
これらのことから、スクワイヤーは「万能で完璧なギター」ではありませんが、多くのユーザーのニーズに応えることができる、非常にコストパフォーマンスに優れたギターであると言えます。
まとめ:本当のスクワイヤーの評判とは
この記事では、スクワイヤーのギターに関する様々な評判を多角的に解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- スクワイヤーはフェンダーが公式に展開する直系の廉価ブランド
- 本家と同じストラトキャスターやテレキャスターの名称と形状を持つ
- 安さの理由は主に海外での生産とパーツや木材のコストダウンによる
- 「恥ずかしい」「ダサい」という評判は初心者向けというイメージから来るもの
- 実際には多くのプロアーティストも使用しており品質は値段以上
- 近年のモデルは全体的に品質が大きく向上している
- Sonicシリーズはこれから始める方に最適な最も手頃なライン
- Affinityシリーズは豊富な選択肢を持つ人気の定番入門シリーズ
- Classic Vibeシリーズはヴィンテージ仕様で価格を超えた評価を持つ上位機種
- Contemporaryシリーズはモダンな演奏スタイルに対応する現代的なモデル
- 作りや加工精度には価格相応の甘さや個体差が見られることがある
- ネック周りやボディ内部の仕上げが粗い場合も
- 改造ベースとしてのポテンシャルが非常に高くカスタマイズが楽しめる
- 特にペグ交換はチューニングの安定性向上に効果的
- 使用目的を明確にすれば多くの人にとって十分満足できる選択肢